研究・教育ポリシー
自己紹介
氏名:佐川志朗
所属・職名:兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科 教授
(併任)兵庫県立コウノトリの郷公園 主任研究員
(兼任)兵庫県立大学自然・環境科学研究所 教授
円山川漁業協同組合 組合員
NPO法人 コウノトリ市民研究所 主任研究員
専門分野:水域生態学、応用生態工学、土木工学
資格:博士(農学)、技術士(建設)、技術士補(環境)
研究:水生動物の生息に寄与する物理環境要因の解明、それに基づく生息場所復元(自然再生)に関する研究
私の経歴
第一フェーズ(コンサルタント)
大学卒業後、北海道の建設コンサルタント会社において、11年間にわたり、河川、ダム、道路、面開発等の公共事業における自然環境の調査、評価、モニタリング、保全対策検討等の117件の業務に携わった。例えば、高速道路事業におけるタンチョウ営巣地への影響を行動圏と餌環境の両面からGISを用いて影響評価を行った業務が一例としてあげられる。在籍中には年間50-100日のフィールド調査(哺乳類、鳥類、両生・爬虫類、昆虫類、魚類、底生動物、プランクトン、陸上・水生植物等の調査)を経験することにより、生態系全般における理解と保全技術を幅広く培ってきた。特に、淡水魚類を主体とする水域生態系に係わる保全対策検討を専門とし、自然再生事業や多自然型川づくり等の最先端の業務に従事した。そして、我が国の環境保全技術に資すると判断した内容については、積極的に社会に対して成果公表を行ってきた(発表・論文)。
第二フェーズ(研究所)
(独)土木研究所自然共生研究センター(岐阜県各務原市)の研究員を8年間にわたり経験した。主な研究テーマは「Ⅰ.多自然川づくりにおける河岸処理手法に関する研究(H18-22)」、「Ⅱ.河川地形改変に伴う氾濫原環境の再生手法に関する研究(H23-27)」および「Ⅲ.希少性二枚貝と魚類をモデルとした氾濫原の生態系劣化機構の解明と自然再生に関する緊急性評価(H20-24)」である。Ⅰでは、大規模実験河川を用いて河川水際域の生態的機能の評価を行い、その機能を石礫や木材を用いて人工的に創出するための応用生態工学的研究を行い、その成果は中小河川に関する河道計画の技術基準の改訂(H22.8月、河川局河川環境課)や多自然川づくりポイントブック1-3(リバーフロント整備センター)に反映された。Ⅱでは、治水容量確保のための河道拡幅および高水敷の切り下げに対して、氾濫原環境の創出、保全のための方法(拡幅幅、切り下げ高・箇所、工事時期)を、微地形、土砂動態、生態系バランスおよび樹林化抑制等に着目して検討した。Ⅲでは、河川および水田水路の両軸から、淡水二枚貝類や希少タナゴ類の生息制限要因を明確にし、全国の水域を対象に環境劣化程度と自然再生の優先性を検討している。また、天然記念物であるネコギギ、イタセンパラおよびミヤコタナゴの保全に関する研究を関係諸機関と実施した。さらに、全国の河川(岩手県砂鉄川、千葉県江戸川、愛知県矢田川、岐阜県木曽川等)において実務レベルで環境の復元に関する事業に関わり、復元方法に対するアドバイス、調査・モニタリングを、行政機関、地域住民、マスコミ、職場および他研究機関の研究者等と協同で行った。
第三フェーズ(大学院)
平成24年4月より、兵庫県立大学の教員としてここ豊岡の地に赴任した。現在の主な研究テーマは「トップページ」に譲るが、このフェーズでは、水田・水路研究への着手が新規開拓研究である。流域生態系を一連のものとして保全するためには、血管であればいわば毛細血管にあたる当該研究の実行は必須である。コウノトリの野生復帰を推進するためには、餌環境として主景観である水田を含めた水域の環境整備が必須であり、ここ豊岡では行政、NPO、市民などによる環境整備事業が行われており、その規模については他所に類をみない。
私の使命としては、コウノトリの野生復帰が唯一成功しているここ豊岡から、リファレンスの田園生態系としての科学的知見を全国に向けて発信していくことである。そして、これらの研究の推進は、大学院のメンバー、共同研究者と共に行っていく。学生教育においては、今まで培った知識と実務経験を生かし、自然環境業務に即戦力となりえる理論・技術体系・人間性を持った学生を育てたい。